WEBコンサルタント
書籍「FREE」再訪
●書籍「FREE」について
2009年、出版物の推定販売額が1989年以来21年ぶりに2兆円を割り込んだとのことです。
そんな出版不況の中、発売から3ヶ月で14万部という速さで売れているWeb関連のビジネス書が「FREE」。著者は雑誌「ワイヤード」の編集長をつとめるクリス・アンダーソンです。
●フリーモデル
今、生活している中で僕らが利用しているサービスも無料のモノが多くなっています。GoogleもTwitterもスカイプも無料です。しかし、無料であってもそのコストは誰かが負担しています。誰がどうコストを負担し、フリーのサービスができているのでしょうか。この本ではそのモデルを4つに分類しています。
◆1:直接的内部相互補助
初回無料のスポーツクラブなど、有料の商品と無料の商品を組み合わせて提供するモデルこの無料分のコストは製品・サービスに内包されています。
◆2:消費者がコンテンツを無料で得るために第三者(広告主)が費用を払うというメディアに象徴される三者間市場
この場合は、広告主がコストを支払っています。
◆3:フリーミアム
基本的なサービスを無料で提供し、さらに高度な機能や特別な機能について料金を課金する仕組みのビジネスモデル
Web特有のモデルの1つです。インターネットの登場から技術進化により、情報流通のコスト構造は抜本的に変化しました。デジタルコピーは何百万本でも無料で配ることができます。
Webサービスでは、ユーザ数が10,000人でも10,001人でも、運営者側にかかるコストはほぼ変わりません。少数の有料ユーザが存在すれば、その他の無料ユーザのコストはほぼ無料になります。
◆4:ウィキペディアやSNSなど評判や注目と言った金銭以外のインセンティブによって成り立つ非貨幣経済
Webの進化がもたらした価値観の変化が最も現れているのがこの非貨幣経済です。貨幣経済から評判経済への移行とも思える非貨幣経済。これまで計測ができなかった「評判」がトラフィックとリンクによって計測可能になりました。例えばGoogleはこれを貨幣価値として転嫁する仕組みを提供しています。
●本書の大切なこと
インターネットの成果ではデータがフリー(タダ、自由)になっていくことは必然であり、止められません。むしろそうした状況を積極的に利用して潜在顧客を増やすなどに利用することが大切だと感じます。
本書で印象的だったフレーズが次の言葉です。
「潤沢さは新たな稀少さを生みだす。」
あるモノやサービスが無料になると、価値はひとつ高次のレイヤーに移します。100年前には娯楽は稀少で時間が潤沢だったが今はその逆です。デジタルでの情報発信コストは限りなくゼロで情報はあふれ返っています。
溢れる情報の潤沢さが生み出した稀少さとは何なのでしょうか。
それは「時間」「リスク」「嗜好」「ステイタス」などです。
今では時間がもったいなくてテレビを見ないという人も知っている限りでもいらっしゃいます。コンテンツより時間のほうが稀少だからです。例えばオーディオブックは2倍速の方がよく売れるそうです。より時間を効率的に使いたいと言うより高次の欲求を満たすからではないでしょうか。
フリーは既存のモノの価値を破壊しますが、新たな価値をその周辺に生み出しています。
それを見つけ、金銭的価値に転嫁する知恵が求められています。
(田邉)
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