WEBコンサルタント
"沿線の街を育てる"鉄道Webサイトのプロデュース
―街の魅力、鉄道の魅力を全国に発信し、
沿線に人を呼ぶWebサイトの条件とは―
通勤・通学など、日頃から私達の生活に深く関わっている鉄道。今回はそうした鉄道会社にフォーカスをあてて、Webサイトの役割・プロデュースの視点について考えてみたいと思います。
・鉄道会社のWebサイトのコンセプトとは?
現代の鉄道会社は、その多くが企業グループとして鉄道・輸送事業から、百貨店、レジャーランドやホテル運営、住宅やビル開発や不動産販売事業に至るまで多岐にわたり所有しています。売り上げ比率にしても、リテール事業を収益軸に、多角的な事業展開が図られています。街の中でなにか行動すると鉄道会社のサービスに当たる、と言っても過言ではなく、鉄道会社がグループ全体として提供しているものは「街そのもの」と言えるでしょう。
鉄道会社が成長を続けていくためには、都市が発展・価値が向上し、域外の人々や地域の住民を惹きつけることが重要になります。これは成果を生むWebサイトを作っていく上でも非常に大切なコンセプトになります。そして、Webサイトは全国から同じようにアクセスすることができ、域外の人々を惹きつける役割を担うことができるのです。
これらを踏まえて、鉄道会社のWebサイトの「成果」を定義してみたいと思います。Webサイト経由での切符やホテル予約、クレジットカード申し込みや通信販売の売上高、販売住宅の資料請求などが、測定できる主なWebサイトの短期的な成果(コンバージョン)指標です。
中長期的なコンバージョン指標を設定する場合、単純に切符の売上向上のためのキャンペーンなどでは対応が難しく、地域住民の利用拡大とともに、他地域からの旅行者を拡大し、利用者数を増やしていく施策が必要になるでしょう。さらに、よりマクロな視点で考えれば、自社が事業を展開している地域の人口を増やしていくといった、都市を育てる発想も求められていきます。
また、観光についても、沿線住民だけでなく、全国からの来訪者の増加も含め、より広く街の観光産業全体の振興を図るといった大きな視点が重要です。
■Webサイトリニューアルの方策1:路線や街の魅力を体系的に伝えていく
沿線の観光地に行きたい、あるいは沿線でグルメを満喫したい、あるいは地域の歴史や文化を訪ねたい、というように、沿線住民や外部地域の人々の旅のニーズを喚起することで、鉄道利用を推進することが可能です。
■Webサイトリニューアルの方策2:鉄道を通してユーザをファン化していく
多角化によって様々な事業を展開していても、鉄道会社のWeb上での強みは、やはり起点となる鉄道事業そのものの魅力にあります。
旧型の車両が多い地域路線は、それを逆手にとりレトロな魅力に焦点を当ててファンを取り込んでいます。また、独自設計の車両に愛着を感じるファンも多く存在します。また、現代でも、運転士は子供たちのあこがれの職業なのです。
Webサイトに、車両紹介や、運転士などスタッフからのメッセージ、鉄道グッズの販売などを盛り込み、子供たちやファンを取り込んで沿線を訪れてもらうきっかけを作るWeb施策も有益でしょう。
■Webサイトリニューアルの方策3:コンバージョンへつながる導線を整理・向上させる
上記のような魅力的なコンテンツも、子会社ごとに断片化して有機的な連携が取れなくなっている場合があります。
これは非常にもったいない状況で、深いサイト階層に配置されている良質なコンテンツを、鉄道サイトのトップページに上げ、体系的に見せるだけで、魅力を効果的にプレゼンテーションし、購入に繋げる可能性を秘めているのです。
・他社はどういうWeb施策を実施しているのか。
サイトのリニューアルを考える際、他社動向の把握は重要です。先ほどのぬれせんべいやレトロ車両をクローズアップしているケースのほかにも、キッズコンテンツが充実したサイト、 "萌えキャラ"で鉄道を紹介するサイト、沿線の歴史や文化的な背景の紹介のために独立したサイトを運営したり、地域の観光情報サイトを運営するケースなど様々です。しかし、各項目の力の入れ方は各社差が激しく、他社より効果的に発信できる余地はまだまだありそうです。
その中で、いくつかのサイトでは、トップページの"グローバルナビゲーション"を体系的に設計しているものがあり、こうした取り組みは注目に値します。鉄道の利用案内、特別列車、乗車券情報、観光情報、はては沿線情報に至るまで、多面的なコンテンツへのリンクが鉄道事業会社のトップページに配置され、すぐにアクセスできるのです。
こうした施策により、沿線に住んでいない人でも一度訪れてみたくなる魅力をWeb上で表現でき、沿線住民も自分たちの街の魅力を再発見し、地域内外から人を惹き付ける"情報発信源"になることができるのです。
もちろん、大量のコンテンツを一気にリニューアルすることは、過大投資のリスクもあり、慎重な判断が必要でしょう。むしろ、段階的に小規模の実験的なリニューアルを積み重ね、コンバージョン(購入数など)の効果測定をしながら、継続的に改善を加えていき、Webサイトを成功へ導いていくことが大切なのです。
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