Webコンサルタントの大前創希が緩やかに進行するブログβ版

クライアントと信頼関係を築くWebコンサルタントの仕事術( 第1回)

本投稿は、2009年後半に小冊子化しました「クライアントと信頼関係を築くWebコンサルタントの仕事術」を、数回に分けて公開している内容になります。
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Webサイトの制作やWebに関わる方々なら、新しい技術や表現力を切磋琢磨されている事は間違いないだろう。今回のテーマは、サイトを制作するという過程の中でも、特にクライアントに対してどのようなスタンスで、どのような事柄を決定し、どのように信頼関係を構築するのか、という部分をWebコンサルタントという立ち位置からフォーカスを当てていく。

結論を最初に伝えると、信頼関係とは"知り尽くした関係"をいう。制作を受注している企業というスタンスからパートナーとして認識して頂ける企業へとステップアップを図るのであれば、この"知り尽くした関係"は必須条件だ。Webサイト制作の現場は得てしてクライアントビジネスの詳細を知らず、オーダー頂いた希望型のWebサイトを構築しがちであり、クライアントのオーダーそのものが間違っていたら?という疑問に真正面から取り組めているとは言い難い現状がある。

Webサイト制作はクライアントとの受発注関係なので、クライアントが希望するWebサイトを構築することが正しいと思われるだろうが、それは大きな間違いだ。もちろんクライアント企業側で念入りに検討し、計画性を持って発注していれば結果は自然と付いてくるだろう。しかしWebサイトのリニューアルプロジェクトが端的な課題から始まった場合、クライアント企業の考える内容では機能しない制作物が出来上がる結果を招き、最悪は投資回収見込みが消え、プロジェクトは失敗または遅延を余儀なくされる。クライアント企業の担当は、Webサイト制作会社にオーダーをすれば仕事の手が離れるというスタンスで居てしまっては、企業がWebサイトを有効利用する未来は見えてこない。

本テーマでは、クライアントとの関係構築という部分に主眼を置き、ファーストコンタクト前にするべき事から始まり、クライアントがビジネス的に成功できるWebサイトをWebコンサルタントの視点で考察すること出来るようになる、考え方を纏めた内容になっている。題して"クライアントと信頼関係を築く Webコンサルタントの仕事術"だ。


<< 第1章:お会いする前に出来る事 >>

まず最初のステップは、お会いする前の情報収集活動だ。事前準備をするということは、単純に考えると営業コスト増加という結果を招きかねない話でもある。出来る限りコンパクトに効率よくコストをかけないで、かつ今後ミーティングを重ねるであろう当該企業に対しての下準備としては、最低限知っておきたい部分を調査するようにしよう。そうする事で、初期コンタクトの際に当該企業側から提示頂いた希望型が違和感の無いものなのか、ある程度イメージできるようにしておきたい。出来る限りコンパクトという事で、下準備は1〜3時間で可能な範囲を纏めてみた。

1)提案依頼企業の今を知る
当然だが、これからお会いするクライアントのWebサイトを一度も見ないでミーティングに挑む人間は居ないだろう。居ないと信じたい。だが、単純に見ればよいというモノでもないので、どのポイントを見ておく必要性があるのか?という部分を纏めてみよう。


<Webサイトの"ゴールページ"はどこか?>

Webサイトは、ただダラダラと生存しているだけのケースを除いて、必ず目的意識を持って構築される。特に企業のWebサイトで目的意識が無いものは少ないと言っても良い。そして必ず存在するのが、目的に対応している"ゴールページ"だ。Webサイトの制作に関わる方々であれば言わずもがなだが、コンバージョンに至るページはゴールとして当然の選択なので、フォーム周辺のチェックは必須項目だ。

出来ればそのフォーム経由で何かしらのアクションをしておきたい。私は出来る限り資料請求や問い合わせをフォーム経由で行ってみる事にしている。また場合によっては物品の購入やサービスの加入などもやってみる事にしている。

これにより判るのは、フォームの入り口から出口までの一連の流れの問題点であったり、当該企業のビジネススピードの現状だ。悪い例を参考に挙げよう。フォーム入力の際に入力者が間違った場合のエラー表示内容が判りにくいという問題や、入力するお客様に対して全角や半角を指定し利便性に欠くケースなど、制作者サイドのエゴが見える現象はフォーム入力中の離脱を招く可能性が高い。どれだけストレス無くスムーズに、ユーザーがシステム側から不必要に指定を受けないインターフェースを構築できるか?この点は非常に重要な観察点だ。


<フォームでホスピタリティを感じられるか?>

また、フォーム入力後の対応も注視しておきたい。直後にはどのようなリアクションがあるのか?サンクスページは適正なのだろうか?もし、サンクスページに入力後に最も見て欲しい導線設計が成されていなければ、それは入力後即!関係解消という意思表示に他ならない。つまり、せっかく入力頂いたお客様に対して「あなたは入力が済んだから、去って頂いても良いですよ。」と暗に言っているに等しい。サンクスページにこそ一連の流れを全う頂いた感謝の気持ちと、続けて何を見て欲しいか、どんな事を知って欲しいか、そういった流れを考えるべきなのだ。システムをシステムたらしめず、人が対応しているのと同等レベルのホスピタリティを感じて頂けるように構築できるかは、ネットという雲の向こう側もまた、人が見ているという観点をどれだけ忘れずに居られるか? という事と等しい。もしそういった観点が欠けているのであれば、初期段階からアドバイスできる内容は非常に増えると言っても過言ではない。

Webコンサルティングという観点では、むしろ業務範囲はWebサイト制作にとどまらないケースが多いため、入力した結果のフィードバックや物品の到着までの流れも知っておきたい。Webサイトの質を改善しようとプロジェクトをスタートさせ進めていくと、当該企業の今までのWebサイト運営方法に問題があるケースに多く出くわす。

そういった場合は、一時的にデザインやシステムを改良し、インターフェース面で解決に導いても、必ずしも成果が伴うとは考えにくい。ユーザーとの直接的な接点を事前に調査することは、Webサイト以外の部分で問題が発生していないかという検討課題に着眼しておく事であり、この先パートナーとしてプロジェクトを進めていく上で重要なリサーチの部分だ。

ゴールページに関しては、他にもいくつか考え方がある。フォーム等の具体的なユーザーとの接点が無い場合でも、一番見て欲しいポイントは階層構造の末端に位置するページに多く存在する。例えばプロダクトを持つメーカーであれば、それらプロダクトまで到達する導線設計や、企業サイトから製品独自のブランディングサイトへ向けた流れ等が該当する。何度も述べるが、Webサイトは存在理由に必ず目的が必要になる。逆にパっとみて目的が見あたらないとなると、それは当該企業がWebサイトの活用法をしっかりと見いだせていないというケースであり、それはそれで重要なインフォメーションとなる。


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第二回につづく...

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